オーシャンジャスパーとは?——マダガスカルで採れる、不思議な丸い模様の石
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白、ピンク、赤、緑、黄色、グレー。
小さな丸がびっしり集まったものもあれば、大きな目玉のような模様、縞模様、半透明の部分や小さな水晶の結晶が見えるものまで。
「本当に全部同じ石なの?」と思うほど、オーシャンジャスパーは一つひとつ表情が違います。
では、そもそもオーシャンジャスパーとはどんな石なのでしょう。
特徴的な丸い模様は何なのか。産地はどこなのか。そして、丸い模様が見えないものもオーシャンジャスパーなのでしょうか。
今回は、実際にオーシャンジャスパーの採掘に関わってきたEnter the Earthなどの資料を中心に、現在確認できることをまとめました。
※『Enter the Earth』については9章にまとめました
1. オーシャンジャスパーとは?

オーシャンジャスパー(Ocean Jasper®)は、マダガスカル北西部の限られた地域から産出する石英質の石です。最大の特徴として知られているのが、石の中に現れる丸い模様——これを 「orb(オーブ)」 と呼びます。
Enter the Earth が公開している薄片の顕微鏡観察では、オーブは主に繊維状の玉髄(カルセドニー)が球状に成長した構造であることが示されています。周囲には粒状の玉髄や石英なども確認されています。
つまりオーシャンジャスパーは、単純に「丸い模様が描かれた石」ではありません。私たちが表面で見ている丸は、石の内部にできた立体的な球状構造の断面なのです。
2. オーブはなぜ丸く見える?
オーブを立体的な球だと考えると、見え方が違う理由も分かりやすくなります。
球状の構造を真ん中近くで切れば、大きな円として現れます。
中心から少し外れたところを切れば小さな円になり、複数のオーブが成長しながら接触すると、丸ではなく不規則な多角形のような形になることもあります。
オーブを立体的な球だと考えると、見え方が変わる理由も分かりやすくなります。
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Enter the Earth では、Ocean Jasper® に見られる模様として、同心円状の bull's-eye(目玉模様)、点状のもの、星や花のように見えるものなど、さまざまな形を紹介しています。
「丸が大きいから別の石」「小さなツブツブだから別の石」というわけではなく、同じオーブ状の構造でも、その大きさや成長の仕方、そしてどこを切ったかによって見え方が変わります。
3. 産地はマダガスカル北西部
Ocean Jasper® の産地として知られているのが、マダガスカル北西部です。Enter the Earth では主な産地として Marovato(マロバト) と Kabamby(カバンビー) という2つの鉱床を紹介しています。2つは約16km離れています。
| Marovato | Kabamby | |
| 場所 |
海岸沿い(現在のOcean Jasper®が広く知られるきっかけとなった鉱床) |
海岸から約2.4km内陸 |
| 色の傾向 | 白・ピンク・赤・緑など幅広い | 緑・黄色が中心、やや不透明 |
| vein番号 | 1st〜8th Veinと呼ばれる | Vein番号なし |
| 模様の特徴 | オーブ・縞・ドゥルージーなど多彩 | オーブ同士が接触した多角形模様も |
「1st Vein」「8th Vein」といった呼び方は Marovato の鉱脈につけられたものです。Marovato ではその後、複数の異なる Vein(鉱脈)が発見されました。Kabamby についてはこのような分類は使われていません。
4. 「海で採れる石」なの?

「Ocean Jasper」という名前から、海の中から採れる石と思われることがあります。
実際、1999年に再発見された Marovato の最初の鉱床は海岸にあり、干潮時にしかアクセスできない場所でした。しかしすべての Ocean Jasper® がそうというわけではありません。Marovato ではその後、内陸側でも新しい Vein が発見されており、Kabamby の鉱床は海岸から約2.4km内陸にあります。
「Ocean Jasper」という名前は、すべてが海中から採掘されることを意味するわけではないのです。
5. 発見されたのは1999年?
現在のOcean Jasper®が市場に登場したのは比較的新しいのですが、この石の存在そのものが1999年まで知られていなかったわけではありません。
発見の歴史1922年、フランスの鉱物学者 Alfred Lacroix がマダガスカルの鉱物誌にこの地域の玉髄を記録。1927年の日付が残る Kabamby 産の古い標本も確認されており、当時の領収書にはドイツ語で 「Augenjaspis(目のジャスパー)」 と記されていました。しかしその後、正確な産地は不明になっていました。 1999年、Paul Obeniche がマダガスカル北西部を探索し、Marovato 村近くの海岸で鉱床を再発見。翌2000年1月、アメリカのツーソン・ジェムショーで市場に紹介されました。 |
6. 「Ocean Jasper」という名前は誰がつけた?

Ocean Jasper という名称は、2000年に Paul Obeniche と The Gem Shop の Eugene Mueller によって付けられました。海岸で発見され、海を連想させる模様を持つことからその名がついたとされています。
The Gem Shop はその後「Ocean Jasper」を米国で商標登録。現在は Enter the Earth が Ocean Jasper® の商標権者です(2022年取得)。
つまり Ocean Jasper は鉱物学上の正式な鉱物名ではなく、流通名・商標名です。「Jasper」という名前がついていても、鉱物学的に単純に一種類のジャスパーとして説明できるものではありません。
7. なぜ一つひとつ見た目がこんなに違う?
Ocean Jasper® を並べると、本当に同じ名前の石かと思うほど違います。大きなオーブ、小さなオーブ、同心円、縞、半透明の部分、ドゥルージー。色も緑・白・黄色・赤・ピンクなどさまざまです。
一つには、産出する鉱床や Vein によって見た目の傾向が異なることが関係しています。Enter the Earth は Marovato の各 Vein についてそれぞれ色やオーブに異なる特徴があることを記録しています。
| 色の原因について——「赤はこの鉱物」「緑はこの元素」というように、Ocean Jasper® のすべての色を特定の成分と結びつけられるだけの確かな資料は今回確認できませんでした。そのため色の原因については断定しないことにします。 |
8. 今回参考にしたEnter the EarthとThe Gem Shopについて
この記事を書くうえで、特に参考にしたのがEnter the EarthとThe Gem Shopが公開している資料です。
The Gem Shopは、Ocean Jasper®が現在の名前で市場に登場した初期から関わってきたアメリカの石材・ラピダリー専門業者です。1999年にMarovatoの鉱床を再発見したPaul Obenicheと、The Gem ShopのEugene Muellerが「Ocean Jasper」という名前を考案し、2000年にツーソンのジェムショーで市場へ紹介しました。The Gem Shopはその後、初期のOcean Jasper®の流通にも関わっています。
一方、Enter the Earthは、その後の採掘と鉱山運営に深く関わってきた会社です。
Paul ObenicheはEnter the EarthのオーナーNader Kawarの師にあたる人物で、Paulの引退後、Enter the Earthは2013年からMarovatoとKabambyのOcean Jasper®鉱山の運営を引き継いだとしています。2022年にはOcean Jasper®の商標権者となりました。
The Gem Shopの記録でも、後に発見されたVeinについて、Enter the Earthが採掘の大部分を行ったと説明されています。
つまり、The Gem ShopはOcean Jasper®の命名と初期流通に関わった当事者、Enter the Earthはその後の採掘・鉱山運営に関わってきた当事者です。
そのためこの記事では、Ocean Jasper®の歴史や産地、Veinについて、一般的な天然石販売サイトではなく、この2社が公開している記録を優先して参考にしました。
| ただし 、どちらも研究機関ではなく、採掘・流通・販売を行う企業でもあります。地質学的な形成過程などについては同社の説明だけで断定せず、確認できる範囲のみを記載しています。 |
まとめ

オーシャンジャスパーは、マダガスカル北西部の限られた地域から産出する石です。特徴として知られる丸いオーブは石の中にできた球状の構造で、その断面を私たちは「○」や「◎」、小さな点や花のような模様として見ています。
しかし、Ocean Jasper® の魅力はオーブだけではありません。縞・玉髄・透明感のある部分・ドゥルージーなどさまざまな構造があり、Marovato と Kabamby という鉱床の違い、さらに Marovato では Vein の違いによっても表情が変わります。
調べれば調べるほど、「オーシャンジャスパー=丸い模様の石」という一言では説明できない石でした。だからこそ、一つひとつ全く違う姿を眺めること自体が、この石のおもしろさなのかもしれません。



